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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)13257号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一(本件死亡事故の発生)請求原因第一項の事実は、当事者間に争いがない。

二(責任原因)

(一) 被告会社

被告会社が事故当時本件加害車を所有していたことは当事者間に争いがない。

ところで被告会社は、本件事故当時の加害車の運転は、訴外松崎が自己の運送業の遂行のため、被告会社に無断で被告小山内および亡敬二に運転させ、亡敬二もこの旨を知つていたから、被告会社は本件事故に基づき亡敬二およびその遺族たる原告らに対し自賠法三条の責任を負わない旨主張するのであるが、結局本件全証拠を検討するに、未だそのように判断するに足りないというべきである。

即ち、

<証拠>によれば、

(1) 被告会社は、神田青果卸売市場内に営業所を持ち、青果物の運送および冷蔵を業とする会社であり、訴外松崎義男は、被告会社の運送部門の従業員で、被告会社の一営業所たるマル神営業所における現場監監督の立場にありかつ配車業務を担当する訴外吉田力の下にあつて、被告会社所有車両の運転手としての業務に服していたこと

(2) 松崎は、被告会社従業員としての業務のかたわら、自らも貨物自動車(白ナンバー)を所有しあるいは被告会社所有の自動車を利用して、被告会社の営業現場で自己の計算で無免許の運送をし、自身で昭和四四年二月末頃被告小山内および亡敬二らを雇い入れ、同人らを右無免許運送の仕事に当らせていたこと、従つて被告小山内や亡敬二は被告会社の従業員ではないこと

(3) 前記吉田は、松崎が右免許運送をしていることおよび被告小山内や亡敬二らを雇用していて、同人らが常時神田市場構内に出入していることを知つていたこと

(4) 松崎は事故当日、訴外阿部青果からキュウリを神田市場から長野まで運送する注文を受け、これを被告会社に対する注文として右吉田に連絡したが、吉田と松崎との話合いの結果結局松崎がその運送に当ることになり、吉田としては松崎自身が被告会社の業務として運転に当るものと了解したが、松崎はこれを被告小山内と亡敬二に被告会社所有の本件加害車を利用してするよう指示し、その運送途上本件事故が発生したこと

がいずれも認められる。

右のように、本件事故時の加害車の運行は、被告会社の従業員でない被告小山内と亡敬二によりなされていたものであり、このことは被告会社の指示によるものでないことは首肯しうるのであるが、しかしながら、被告会社が松崎に対し前記無免許運送や被告小山内、亡敬二らを雇用してこれに仕事をさせることを厳に禁じていたとか、被告会社の業務として松崎自身従事すべき被告会社所有車の運転を被告小川内や亡敬二にやらせることが全くなくあるいは右吉田がそのことを全然知らずもしくは被告会社において松崎に対しそのことを禁じていたとか、さらには被告小山内や亡敬二がそのようなことを知悉しながら本件事故時の運転に当つたとかの事実を認めるに足りる証拠はない。証人吉田力は、被告小山内や亡敬二が被告会社の車を運転したときは松崎個人の仕事であり、無断で被告会社の車を持ち出したことに他ならない旨証言するが、これは同人の解釈を述べたものに過ぎないし、また証人芳賀寿司は、被告会社所有の車を被告会社従業員以外の者に運転させることは許されない旨証言するが、これとて単に建て前論に過ぎず、現実にそのような注意が松崎らに徹底していた趣旨には解されない。また成立に争いのない乙二号証、証人松崎の証言により成立の認められる乙五号証、被告小山内本人の供述により成立の認められる乙四号証には、右事実に副う同人らの供述記載があるけれども、右各号証の記載および当法廷における証言ないし供述を通じて、松崎および被告小山内の供述はその置かれた状況により転々として帰一するところを知らず、右(1)ないし(4)に認定した事実に副う部分(即ち他の資料により十分に裏付けうる部分)以外は、一切措信しうるところでない。他に右のような事実を認めるに足りる証拠はない。

証人吉田および同芳賀の証言と弁論の全趣旨によれば、松崎は古くから被告会社の運転手をしていて、運転手数人のいわゆる棒頭としてこれを監督する立場にあり、被告会社所有の車の管理や受注の決定について事実上ある程度の権限を与えられていたものと窺われるから、松崎は被告会社の業務としての運送と自己の無免許運送との間で、被告会社所有車を利用するか自己所有車を利用するか、あるいは自ら運送に当るか被告小山内や亡敬二をしてこれに当らせるかをしかく厳格に区別することなく、従つて自ら被告会社所有車を運転して自己の運送をすることがある反面、被告小山内や亡敬二をして被告会社所有車を運転させて被告会社の仕事をさせることもあり、そして被告会社においても、事実上これに目をつぶることもあつたのではないかとの疑問が払拭できないのである。特に本件事故時の運送は、前記吉田に連絡ずみのものであるから、松崎としてはこれを自己の運送とすることはできない筋合であり、それにもかかわらず被告小山内らにその仕事に当らせたことは、右の疑問を裏付けるものということができる。

以上の次第であるから、結局本件事故時における被告小山内や亡敬二による加害車の運転が、被告会社において許容しないものであり、しかも亡敬二においてこのことを知悉していたと認めることはできないというべきであり、そうとすれば、被告会社は本件事故時における加害車の運行に対し、従業員松崎を通じて運行支配を有し、本件事故により死亡した亡敬二およびその遺族たる原告らに対しても、自賠法三条の責任を負う立場にあるものといわなければならない。

(坂井芳雄 浜崎泰生 鷺岡康雄)

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